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ぼくらが上川町でEFCを会社にした理由。

2022.04.26
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EFC inc.・絹張蝦夷丸さん、志水陽平さん、小野加奈子さんインタビュー

上川町で働く人たちは日々どんなことに “問い” や “学び” を感じているのでしょうか。その思考を紐解くべく、Toi LABOでは一人ひとりのロングインタビューをお届けしていきます。第三弾は上川町でコワーキング施設・PORTOの運営やアウトドアを軸としたイベントやコンテンツの企画、プロデュースなどを幅広く手がける株式会社 Earth Friends Camp(以下 EFC)から代表取締役の絹張蝦夷丸さん、取締役の志水陽平さん、小野加奈子さんが登場。異なるバックボーンから上川町へと辿り着いた3人がこの町で感じたことやEFC inc.が目指すこれからについてお話を聞きました。

EFCってなに?立ち上げのきっかけからメンバーの出会いについて

— まず最初に、EFCとはどのような会社ですか?

絹張 外遊びやアウトドア・アクティビティを通じて、自然と人、人と人をつなぎ、「自然のある豊かな暮らし」を提案しています。暮らしの中に自然を取り込んでいくことで、これまでの生活をあらためて考えたり、豊かな暮らしって何だろうって考えたり……とにかく楽しい人生にしましょうよ!という団体です。

— ただ自然の中でアクティビティを楽しんでもらうだけじゃなくて、身近な存在に感じられるようにサポートを包括的にしていくということですね。立ち上げのきっかけについても教えていただけますか?

絹張 父親がアウトドアのクラブを主催していたこともあり、小さい頃から僕自身カヌーや山登り、釣りといった外遊びはすごく身近なものでした。ところが、高校から札幌に出てきたら、周りでそういう遊びをしている人が誰もいなくって。もちろん環境の違いもあるとは思うのですが、どうしたらもっとみんなも自然のなかで遊べるのかなって考えるようになったことをきっかけに環境系のNPOにアルバイトに行くようになって、そこで知り合った友達とEFCを始めました。

— 当初はどのような活動形態だったんですか?

絹張 友達とかとのキャンプを、「Earth Friends Camp」と名付けてやるだけ。最初はその友達と当時付き合っていた、僕の今の奥さんの3人しかいなくって、キャンプについてフェスの告知みたいに発信したら「やってみたい」という人が出てくるんじゃないかと盛り上がって。架空のフェスとしてホームページやオリジナルTシャツを作って、「第一弾アーティスト発表!」など自分たちのモチベーションを高めるために告知をしていったんです。3人しかいないのに、大勢で楽しんでいるような動画を撮影してSNSにあげてみたら、「私もいきたい!」と言ってくれる人たちが少しずつ出てきて仲間が増えていきました。

— 一度参加すると皆さん常連になっていかれるんですか?

絹張 そうですね。加奈ちゃん(小野)もそこで参加してくれたメンバーの一人です。

小野 札幌ってそういうアウトドアをやりたい人はいっぱいいるんですよ。近くに自然もあるし。でも道具がなかったり、やり方がわからない。そういう人たちにとってEFCの活動はすごく入りやすかったんですよね。

絹張 札幌とかに住んでいると、カヌーをするにも遠くまでいかなきゃいけないとか、お金を払ってガイドの人と一緒にやらなきゃ分かんないとか、とにかくハードルが高くって。もっと自然を生活の近くに感じてもらうのにいい方法はないのかなって考えていたところ、メンバーの一人が「泳ぐだけならできるんじゃない」って提案してくれて。ライフジャケットだけたくさんレンタルしておいて、それを着てただ川に浮かんで流れるだけのイベントもやりました。

小野 ついでに川のゴミを拾ってね。

— 楽しみながら地域の環境保全にもなる、素敵な企画ですね。志水さんと絹張さんはどこで出会ったのですか?

絹張 僕が札幌のゲストハウスで働いていたときに、「ゲストハウスについて色々教えてください」ってアポなしでその宿にやってきたのが陽平くん(志水)でした。

志水 大学卒業後は北海道庁で公務員をやっていたんですけど、いつかゲストハウスを自分でやりたいなって思っていて、道内のいろいろなゲストハウスを訪ね歩いていたときに出会ったんです。話してみると同い年ということもあり、ゲストハウスを通じていろいろな話をするようになって。のちに僕が働いていた旭川のゲストハウスにもEFCのみんなで来てくれたりしました。

— それぞれ別々のきっかけで絹張さんと出会い、輪が広がっていったんですね。みなさんが上川町に辿り着いたのはどういう流れだったのですか?

志水 僕が層雲峡でホステルを開いたのが最初ですね。ある時、層雲峡エリアでイベントをやることになり、絹張くんにコーヒー屋さんのポップアップをお願いして、上川町に3日間くらい来てもらったんです。そのときがちょうど「KAMIKAWORK」が始まるタイミングだったんですよね。来年から地域おこし協力隊として働いてくれる人を募集しますというアナウンスがあって。

— それが2019年の初代メンバー募集のタイミングですね。

志水 そうそう。それで当時のパンフレットを二人に見せて、「こんなのあるみたいだよ」と話したら、意外と二人とも食いつきが良かった。

絹張 ノリもあったんですけど、普通にパンフレットもカッコよくてイケてるなって思ったのと、表紙に描かれていたコーヒーを淹れてるキャラクターが俺にめっちゃ似てるなって思って(笑)。

— あ、似てる。これはちょっと運命を感じちゃいますね(笑)。

志水 その頃ちょうど、うちの宿で加奈ちゃんの旦那さんが働いていて、加奈ちゃんにも「これどう?」って話になったんだよね。

— 皆さん色々なところで絡み合って上川に集まってこられたんですね。

志水 逆に僕は軽い気持ちで誘ったので、本当に?もうちょっと考えたら?ってちょっと焦っていました(笑)。

絹張 締め切りまで時間がなくて、悩んでいる暇はなかったんです。応募するには企画書など色々と準備も必要だったので。すぐにイベントの空き時間に上川町を車でみて回って、スーパーあるし、郵便局あるし、保育所もあるし住むのには問題ないねと応募を即決しました。内心ダメ元だったんですけど、みんなで受かっちゃって(笑)。

— 決断と行動のスピードがすごいですね!上川町に実際に移住してみていかがでしたか?

小野 自分が思っていたほど田舎じゃないなというのが最初の感想でした。生活も不自由なくできるし、旭川も近い。さらに、共通の趣味であるアウトドアも本当にフラッと行けるのが最高の環境だなと。でも、協力隊の仕事は思っていたより大変で、一期生ということもあって、役場も私たちも手探り状態。「もっとこうした方が良くないですか?」というような意見のぶつけ合いをたくさん行った記憶があります。でも、振り返ればそうやって正面から向き合えたことで、役場の方たちとたくさんいい話し合いをすることができたと思っています。

新たなつながり。それぞれ少し先の未来を考えて決めたステップアップ

— こうやって一緒に会社をやる未来というのはいつ頃から考え始められたんですか?

絹張 僕自身は協力隊に応募するときに、EFCは卒業の段階で法人化するというのをプランとして出していました。

小野 法人化するというのはずっと言っていたよね。最初は誰も賛同していなかったけど(笑)。それぞれみんな仕事してたし、あまりイメージができていなかったんだよね。

絹張 僕の中では、ただ会社という場所を作って出社して欲しいということではなくて、これまでの活動をちゃんと続けていくために法人化が必要だと思っていたんです。やりたいからやるというモチベーションだけではリターンはないので、ボランティアで続けていくのは正直しんどいなと感じていて。ただ、法人化することで立ち上げ当初の想いを維持できるのかとか、みんなが離れていかないかなとかはずっと悩んでいました。でも、やっぱりEFCを残すことで何かにつながると確信していたし、残すためには法人化することが必要だと思ったので、協力隊の一年目が終わるタイミングで「会社作るやつ」という資料を作って、二人にプレゼンしました。

小野 ちょうどその頃から上川町の中でいろいろなことを頼まれだしていたんですよね。アウトドアに関することとかイベントとか。それらを請けていくにあたって何かしら仕組みを作らなくちゃいけないという気持ちもあって、やっと絹張くんが言い続けてきた会社を作る話に私たちのピントが合ってきたなと。

— 法人化に向けて、お二人は個人的にはどのようなモチベーションで取り組まれたのですか?

志水 僕は単純に色々と始まっていくのが楽しそうだなという気持ちと、これからも上川町でみんなと働いていく中で自分にできることがまだあるなと思ったから。これまでは協力隊の子たちが自発的に動いてプロジェクトを進めていたんですけど、やっぱりスムーズに連携をとるのが難しくて、そこを課題に感じていたんです。こういう受け皿になる母体があることで、もっと一人ひとりがスムーズに動けるようになるのかなって思って。

小野 私は協力隊の任期満了後も移住を続けたいとは思っていたのですが、役場で働くのはちょっと違うなと思っていたんですよね。そうじゃない何かをしたいけど、自分一人でやるのは難しいかなって思っていて。そんなタイミングで声をかけてもらって、一緒だったら怖くないし、同じような気持ちの人が入ってきてくれたら仲間が増えるかもしれない。これはぜひ一緒にやりたいなって思いました。

— 実際に起業されて、気持ち新たにこうしていこうというような話はされましたか?

絹張 会社を作る直前に合宿をしました。

小野 なんかやっぱりブレていくじゃないですか、人の想いって。そこを明確に言葉にしておかないとどんどん会社がずれていってしまう。立ち返った時に原点にあったビジョンに戻れなくなってしまうと組織の意味がなくなっちゃうので。それをみんなで考えようという合宿を隣町のコテージを借りてやりました。

志水 僕らだけじゃなくて、それぞれの家族やEFCの仲間も誘って、来れなかった人はリモートでつないで、EFCに関わってきたメンバーたちにみてもらいながら夜な夜なとにかく話し合いましたね。

小野 そのときにたくさん出てきた言葉をまとめて、気づいたらEFCのホームページができていました(笑)。ホームページにはその時の言葉たちをぎゅっと詰め込んでいます。もちろん、みなさんにみてもらうためもあるけど、私自身も迷ったら見返すようにしています。

— 自分たちが立ち返るための軸ですもんね。立ち上げから8ヶ月、変化などは感じますか?

志水 整えるだけで一杯一杯な気がしていて、全然落ち着かないですね。たまには自分たちでちゃんと遊ぶ時間を作ったりしないと、逆にずれていってしまう気もするし。

小野 最近うちの旦那がよく言うんです。「アースフレンズキャンプは全然遊んでないじゃないか!」って(笑)。

絹張 小野ちゃんが一番遊んでいるんですよ。一番いい暮らしをしてる。

小野 本当に一番アースフレンズキャンプを満喫しているのは彼だと思う。

絹張 逆に俺が憧れてるもん(笑)。

— 今後のEFCの活動は上川町から広域に広げていくことも考えていらっしゃるんですか?

絹張 もちろんそうですね。そもそもが北海道全体をフィールドにするということを法人化する前から掲げているので。

— 拠点は上川町に残して?

絹張 はい。上川町ってめっちゃちょうどよくて、高速の乗り口も近いですし、道東や十勝方面とかも遊びたいフィールドに行きやすいんです。他の地域と協業した観光プロジェクトとかもいつかやりたいなと思っています。

— それはとてもワクワクしますね。

絹張 だからこそつながりを増やしていきたいですね。僕らが遊べる場所をもっと増やしていきたい。あとは、PORTOも増やしたいです。PORTOって港という意味があるので、いろんな町に作って、その港でみんなが行き交うようになったら面白いですよね。

— 最後に今の現在地から振り返って思うことを教えてください。

小野 私たちがそれぞれやっていることってゴールがない仕事だと思うんですよね。コーヒー屋も宿も移住も。その時々のベストを尽くすことしかできないので。だからとにかくやるだけ。でもみんなと一緒だったらやっていけるんじゃないかなって思っています。

志水 僕は柔軟さが大切だなと改めて思っていて。まだまだコロナもありますし、変化が多く、新しい人や物事への取り組みがこれからも増えていく中で、自分たちの芯は大事にしながらもどんどん柔軟に対応しながら続けていきたい。なかなか難しいんですけど、頑固おじさんにならないようにやっていきたいなって思いますね。

— 絹張さんはいかがですか?

絹張 会社を作った理由の一つには、僕らみたいに新しいことを起こす人が続いてほしいなというのもあって。そういう動きがあれば応援しあいたいです。協力隊もそうですし、協力隊以外の人でもUターンで上川町に戻ってきて事業を始めますといった人が増えたらいいですよね。僕らがここで事業をやっていることで、町の外にいる人たちが上川町なら何かができそうと思ってもらえるようになったらいいなと思いつつ、上川町以外の仕事で外貨取りに行きたいって思ってます。

— 外貨ですか?

絹張 僕は町外で稼ぐことを外貨取りに行くって呼んでいるんです(笑)。経済的な意味で町が豊かになるためには外から稼ぐことが大切だと思っていて、町の中で完結するんじゃなくって、僕たちも外からお金を稼げるようになっていかないと結局持続していかない。だからこそ、この町を拠点にもっと広く活動していきたいなと思っています。


だれもが気軽に自然の中で楽しく過ごせるような外遊びイベントの企画・運営、空間作りをしているアウトドアコレクティブ集団。
2014年に設立後、「Being outdoor makes our lives better.」をスローガンに任意団体として活動。
2021年6月に発起人の絹張蝦夷丸を代表取締役として法人化。
ともに上川町で暮らす志水陽平、小野加奈子を取締役にイベントや撮影コーディネートなどを行うプロデュース事業、アウトドアウェディング事業、ローカル事業という3つの柱で運営を行っている。
HP:https://www.earthfriendscamp.com/